『陽子の一日』(本)

南木佳士のエッセイ・本はたいてい読んだはずだったが図書館でこの「陽子の一日」を見つけた。作者は医者であるからして何時も同じテーマでの作品が多い。それでも情景の細やかな表現が好きで、私が好んで読んでいる作家である。作者は浅間山が見える佐久の病院勤務の医者であり、嬬恋村の生まれであり、最近は山の文章が目立つので親近感を覚えるからかもしれない。この「陽子の一日」もやはり医者の話である。
ただ、作者自身も歳をとってきたためか、主人公も60歳の疲れた医者としている。

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「陽子」は先端医療から離れた医者であるが、ある日かっての同僚で過疎村の週末期医療に疲れた黒田の「病歴要約」を若い研修生から受け取り読み始める。のっけから医者らしい描写もあり生理的に受け入れないところもあるのはあの「医学生」に通じるところがある。

「陽子」と「黒田」の経験と生い立ち・病歴・医療経験が語られるがこれは作者自身のそれであろう。つまりいつものパターンであるが、表現方法に「病歴要約」という文章を中に入れたことはユニークな構成で面白かった。

‘だから読後感想は何なのか?’と言われそうだが、芥川賞をとった「ダイヤモンドダスト」などの比べれば格段に面白かった。面白くもなかった「ダイヤモンドダスト」がなぜ芥川賞をとれたのか今だもって分からないが(“あんたに言われたくない”と言われそう)、私はこちらのほうが小説として好きである。

私自身が歳をとってきたこともあり、歳をとってきたもの感情と感性が分かって、この小説は今までの彼の作品の中でも十分楽しめた一冊であった。

(注) 写真は文藝春秋社の広告があらすじの書いてある「帯」付きであったのでお借りしました。

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