『タベイさん、頂上だよ』 (本)

登山家、田部井淳子さん。一見その辺にいる普通の小母さんに見えるが、やっぱり並の人でないことがこの本を読んでわかった。「頂上」とは、言わずとしれた世界最高峰「エベレスト」。それも女性とし世界て初めての快挙(1975年)となれば当時の騒がれようが目に見えるようだ。

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今でこそ、エベレスト ツアーがあり、個人でも案内人に連れて行ってもらえば登れる(もちろん、簡単ではない!)ようだが、39年前の、それも女性だけの登山チームでの登攀は並大抵でなく大変だったことがうかがえる。

私は、今まで彼女のことも、彼女のチームの業績もあまり知らなかったが、こうして読んでみると、平凡な学生が山にのめり込んでゆくさまが面白い。谷川「一の倉沢」で先輩に鍛えられ、多くの山々を登り、やがて夢と思っていた海外の山に誘われ、アンナプルナ峰に登頂し、以後勤労者として、妻として、母親としての登山家がエベレストに登る一生の過程と心情が良くつづられている。

女性だけのチーム故の仲間との葛藤も赤裸々につづられているところが興味深かった。極地法の登山では登頂者のみが後の栄冠を得るが、支えた仲間の不満・猜疑心等は当然であろうし、それに耐えて彼女も今の栄光を得たのであろうと思うが、良き先輩との出会いと指導、山屋の夫との結婚・協力等、彼女は「恵まれていた」のだろうとは思う。しかし、何よりも彼女の夢への飽くなき努力と意志の強さに驚かせられる。

そういえば金峰山の登山ガイドの人が、“田部井さんもこの頃丸なった。昔はもっときつかった”と言っていた言葉がこの本を読んでいて思い出された。さもありなんと思う。

文中にもあるように、登山をスポーツとらえると、男女の区別がない唯一のスポーツとなる。どんな競技にも男女別になっているが登山だけは別である。山は、男でも女でも脅威も魅力も区別しないという。女だからといって、山の自然は優しくしてくれないという。

印象に残った言葉を以下本から引用:

「登頂は一瞬の出来事であった。しかし、その一瞬のために1400日という長い間、いろんな地域で、いろんな職業をもった女の人が集まり、それをずっと準備してきたんだという、むしろそのことの方が、登頂そのものよりうんと貴重で大切なことだと私は思う。
 (中略)
これが出来たのも、単に体力とか技術だけが優れていたからではない。本当にやろうとした意志があったからこそ、1400日というこの長い準備に耐えられたのではないだろうか。この意志はお金で買うこともできないし、人から作ってもらえるものでもない。本当に自分の心の中から何か燃え上がるような、そんなファイトが湧いて意志となるのだ。それだけに意志は尊い。意志こそ力だ、と私は思った。」

《田部井さんのサイン》
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しかし、田部井さんといい、先に紹介した山野井妙子さんといい、日本の女性は強い。脱帽である。

この本は14年前に「エベレストママさん山を語る」に加筆発行された本だが、2年前「山と渓谷社」から文庫化された。

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