『陽子の一日』(本)

南木佳士のエッセイ・本はたいてい読んだはずだったが図書館でこの「陽子の一日」を見つけた。作者は医者であるからして何時も同じテーマでの作品が多い。それでも情景の細やかな表現が好きで、私が好んで読んでいる作家である。作者は浅間山が見える佐久の病院勤務の医者であり、嬬恋村の生まれであり、最近は山の文章が目立つので親近感を覚えるからかもしれない。この「陽子の一日」もやはり医者の話である。
ただ、作者自身も歳をとってきたためか、主人公も60歳の疲れた医者としている。

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「陽子」は先端医療から離れた医者であるが、ある日かっての同僚で過疎村の週末期医療に疲れた黒田の「病歴要約」を若い研修生から受け取り読み始める。のっけから医者らしい描写もあり生理的に受け入れないところもあるのはあの「医学生」に通じるところがある。

「陽子」と「黒田」の経験と生い立ち・病歴・医療経験が語られるがこれは作者自身のそれであろう。つまりいつものパターンであるが、表現方法に「病歴要約」という文章を中に入れたことはユニークな構成で面白かった。

‘だから読後感想は何なのか?’と言われそうだが、芥川賞をとった「ダイヤモンドダスト」などの比べれば格段に面白かった。面白くもなかった「ダイヤモンドダスト」がなぜ芥川賞をとれたのか今だもって分からないが(“あんたに言われたくない”と言われそう)、私はこちらのほうが小説として好きである。

私自身が歳をとってきたこともあり、歳をとってきたもの感情と感性が分かって、この小説は今までの彼の作品の中でも十分楽しめた一冊であった。

(注) 写真は文藝春秋社の広告があらすじの書いてある「帯」付きであったのでお借りしました。

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この記事へのコメント

kazz
2014年03月02日 07:42
きらなさん、おはようございます。
私も南木桂士が好きで、作品はほとんど読んでみました。
きらなさんのおっしゃるとおり、歳とともに人間が丸くなったのか、文章が熟成してきた感じがします。
 南木さんとは全くタイプが異なりますが、
同じ信州に住む医師、夏川草助さんの「神様のカルテ」シリーズを娘に借りて読んでみました。

 
きらな
2014年03月02日 10:41
おはようございます。また今日から雪のようですね。
南木桂士の作品は「生と死」というテーマが最近多いですが文章が丁寧でどこか読んでいて淡泊というか心地よさを感じます。
夏川草助さんの「神様のカルテ」ですか。読んでみます。
私は気に入った作品を読むとその人の全部の作品を読んでみようという気になるの性格なので、新しい作家の発見が楽しみです。この前、同く医者で作家の久坂部 羊の「まず石をなげよ」を読みましたがサスペンス風で面白かったが、どうもいまひとつピンとこない感じがしました。もう少し他の作品も読んでみます。

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